2012年6月18日月曜日

セデック・バレ 賽德克巴萊 第一部 「太陽旗」かなり(超)ネタばれ鑑賞ガイド 第四回

「太陽旗」ネタばれ鑑賞ガイド 第一回はこちら

◆シーン16◆マヘボ社モーナ頭目の小屋
ルーダオ、タダオ、バッサオの三人で火を囲んでいる。
煮え切らない父ルーダオを窺いながら「日本人と戦いましょう・・・」とポツリと言ってしまう。
わずかな沈黙の後、突然火のついた炭をタダオに投げつけ「この、ろくでなしが!」と怒鳴りつけ、バッサオを殴り飛ばし、
さらに火のついた炭を蹴り上げ、怒りを納める様懇願する二人に「お前は何を学んで来たんだ! 思ったとおり! ろくでなしだ!」
と怒鳴りながら、何度も蹴りつける。

三人は憤慨した様子で小屋を離れ、タダオは怒りを帯びた形相で、駐在所の前を通りマヘボ社を出る。

場面変わって、鉄製の吊り橋。(橋の幅は1.5人分)
恐らく濁水溪に架かる橋で、櫻方面からマヘボ、ボアルンに渡る途中のシーン。
◆シーン14◆で、江川警察課長が各社視察の為、二郎に同行を願ったが、用事を優先させてあげた為、
変わりに蕃通の樺澤巡査部長を同行させる。
(樺澤は、第二部後半で再出。トロツク社(卓犖社)の駐在所勤務。台湾霧社事件誌 原因編より)

木村祐一扮する佐塚警部が、下に架かる竹製の橋を指しながら、丈夫な橋を使わず
みすぼらしい橋ばかり使う理由が解らないと憤慨し、直に取り壊すと豪語する。
同じく竹橋を見ながら樺澤は「水汲など生活する上で便利なんです」と江川に説明する。

すると、マヘボ側から顔に怒りを湛えたままのタダオが、正面一点を凝視したまま近づいてくる。

樺澤らは名前を呼ぶが、黙したまま目も合わさず、こじ開けるように通り過ぎて行く。
樺澤は江川にタダオの素性を説明する。
江川警察課長「我々に対して無反応なのは何故なんだ?何か問題でもあるのか?」
佐塚警部「いや、あれはこの辺りの蕃人の習慣ですよ」
江川「良い習慣ではないな」
佐塚「あれは生蕃ですからね」
江川「君はいつもそんな言い方をするのか?」

そこへ、タダオを慌てて追って来た杉浦巡査(マヘボ駐)が駆け寄って来る。
杉浦「あっ、主任、課長ようこそ。課長がいらっしゃるのであれば、
お先にお知らせいただければ、あの、蕃人に踊らせて歓迎させましたのに」
江川「それには及ばんよ」
杉浦「いや~課長、そうご遠慮なさらずに」

◆シーン17◆マヘボ溪の奥深い沢
頭目モーナが細めの竹を伐採している。
そこへ、花岡一郎がやって来る。
一郎は内地観光に行った時の、日本の様子を聞きに来た。
(1911年に日本に行っている)
軍隊、大砲、機関銃、飛行機に蒸気船を持っていて、
「日本人は、森の中の木の葉よりびっしりと詰まっている」
「濁水溪の小石より多い」
と話、質問の意図は解っていると、
「日本のことが聞きたいのでは無く、私に、その強大さを思い出させたいのだ」

一郎を上から下まで一瞥して、
「心配するな。決して忘れることはない」
「ふん! お前は日本の警察官だ」
「何日も船に揺られて、見せられたのは飛行機、大砲・・・」
「だが、ここにいる警官より優秀でより親切だった。奴らは我々の反抗を恐れ、最善を尽くしていた」
「しかし、山の日本の警察は、我々の出草(首狩り)を制限してきた!」

一郎は、日本の警官である前に、自分も同じ血が流れるセデックだと訴える。

「お前は、死後、日本の神の元(神社)へ行くのか?」
「それとも、我々祖霊の家へ行くのか?」
「私は耳にした・・・お前は、日本人がするように我々の子供を叩いた」

一郎は、日本人と対等になって欲しいと思う気持ちで叩いたと言う。

「お前は師範学校を卒業した、お前は他の、どの日本の警官より高い教育を受けている」
「なのに、なぜお前の給料は最低なんだ?」
「日本人は、お前を評価しているか?」
「一族の者を叩いて、お前も軽蔑してるんじゃないか!」

「日本滞在中のことだ。日本人は我々部族同士が反目しあっていることを知っている」
「なのに、わざわざ同じテーブルに座らせた」

「食事中は常に牽制しあっていた。出来るなら直ぐに抜刀し、相手を殺したかった!」

「ふん! 日本人はこういう事を弁えている」

一郎は、日本統治のおかげで、少なくとも文化的な暮しが出来、最早昔とは違い、今更野蛮な慣習を続ける必要はないのではと聞く。

「奴らに支配されるのがそんなに良いか?」
「男たちは、丸太を運ぶ為、腰を屈めることを強いられ、女たちは酒を注ぐ為に跪かされ」
「受け取るべき金は、すべて日本人警官の懐の中に納まる」

「目の前に迫る現実を・・・・・毎日飲んで酔い、見ぬ振り、聞かぬ振り」
「他に何が出来る!?」
「郵便局? 商店? 学校? どれが、我々の生活を快適にしてくれているんだ?」
「反対に、目に見えて貧しくなっていないか!」

一郎「我々は、20年我慢して来ましたよね?」
ルダオ「セデック族が絶えるのに20年も必要ない! 猟場も失っている! 我々の子孫は日本人になっている!」
滝壺に虹が架かる・・・・・・俯瞰で沢にいる二人を映す・・・・・

一郎「モーナ頭目・・・・・あなたは決断したんですか?・・・・・モーナ頭目」
一郎「吉村について・・」
ルダオ「私は年を取り過ぎた・・・・・心配するな、日本人には敵わない・・奴らに刃向かう気は無い・・・」

ルダオ「帰りなさい、ここは私だけの猟場だ、出て行きなさい!」
とぼとぼ帰ろうとする一郎。

ルダオ「ダキス、酒を飲みなさい、戻って、酔い潰れるまで飲みなさい」
一郎「もう飲むことができません・・・最早・・・・・」
ルダオ「飲みなさい! 祖先から受け継がれた酒を、一族の民を解放する」
ルダオ「自由に皆を踊らせ、泣き、笑い、一体となって酔えば、お前もわかるだろう!」

一郎は思いつめた様な顔をして帰って行く・・・

一人、沢に残るモーナ・ルーダオは、パイプを燻らせながら、滝壺に架かる虹を眺め茫洋とする。

何処からともなくモーナを呼ぶ声が聞こえる。
不意に立ち上り、辺りを見回すが、特に怪しい様子も無く、再び岩に腰かけ、蕃刀を川面に浸し弄ぶ。

蕃刀に太陽光線が反射し、目に入った瞬間、肩をつかまれる。
驚き振り向くと、そこには亡き父の姿が。

「モーナ、お前の刺青は依然として、とても深く、黒い・・・」
  「お前は紛うこと無き「真の人(Seediq Bale)」だ。お前こそ真の英雄だ」

頭上の巨岩を仰ぎ見ながら
「モーナ、あの岩の線条を見よ。あの岩は、雷によって削られた」
  「夕暮れの薄暮の中・・・雷が岩を削った・・・何て美しい場所だ」
ルダオ「父よ・・・・・私は侵略者を追い出すことが出来ない」

父は歌い出す。賽德克‧巴萊之歌 莫那父子溪邊對唱
http://www.youtube.com/watch?v=9i1IFm3UpOw&feature=related
♪ああ、それは本当です♪
♪私は、ここに立つ♪
♪私の英雄が見守る山♪
♪確かに・・・本当です♪

「モーナ、さあ、歌おう。長い間、共に歌うことが無かった」

父子の輪唱
♪過ぎ去った一族を偲ぼう♪
♪私は、ここに立つ♪
♪私の英雄が見守る山♪
♪我々の山だ♪
♪我々の渓流だ♪
♪我々は紛うこと無き「真の人(Seediq Bale)」だ♪
♪我々は山へ狩りに行く♪
♪我々一族は部落で食べ物を分かち合う♪
♪我々は渓流から水を得る♪
♪私の願いはこの為に命を捧げることです♪
♪おお、小川よ! 静まってください・・・♪
♪祖霊の鳥は歌う・・・♪
♪どうか我々に美しい歌を歌ってください♪
♪一族の民に歌って聞かせてください♪
♪我々祖先の魂の歌を♪

モーナは父の肩に触れようとするが、父は立ち上り歩き出す。

♪私の願いはこの為に命を捧げることです♪
♪雷光が岩を貫くと♪
♪虹が現われる♪
♪そして、誇り高き男が現れる♪
♪その誇り高き男は誰ですか?♪
♪それはあなたの子孫です♪
♪真の人(Seediq Bale)♪

父は、滝壺の虹の中に消えて行く。

◆シーン18◆に続く

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